「六段の調」「千鳥の曲」「夕顔」などの曲名は、邦楽に縁のない人でもすぐに読めますね。しかし中 には、ちょっと邦楽をかじったくらいでは読めないような曲名を見かけることもあります。
そのような曲をいくつか挙げてみましょう。
まずは「石橋」。思わず「いしばし」と読みたくなりますが、正しくは「しゃっきょう」と読み、謡曲のタイトルとしてでも有名です。
ふた昔も前の話になります。とある絃方の演奏会で、社中の若い女性(おそらく初心者だったのでしょう)がアナウンスをしておりましたが、この曲の紹介の段で「次は『いしばし』です」と言ってしまいました。
すぐに師匠か先輩に指摘されて、演奏が終わったあと、「ただいまの曲は『しゃっきょう』でした」と訂正しました。私はたまたま裏方の手伝いで、その場に居合わせましたが、気の毒なことにその女性は訂正したあと、泣き出してしまい、仲間が必死になだめておりました。
この一件があってからその女性は「いしばしさん」と呼ばれていたと言う話もありますが、詳しいことはわかりません。
もう一つ、おなじようなものに、山田流の名曲「熊野」があります。
これも「くまの」と読みたくなりますが、正しくは「ゆや」です。
「石橋」と同様、これも同名の謡曲を題材にしております。
山田流の社中にも「くまのさん」がいるかもしれませんね。