人物紹介:東京師範会・遠音会会員 伊藤静勘師

 「尺八が趣味」と言うだけで、「高尚な趣味をお持ちですね」などと言われることが時々あります。まして師範となると、益々尊敬の目で見られたりします。
しかし私たちの仲間の中には、尺八の師範であるばかりではなく、芸術的に幅広い趣味を持ち、しかも優れた評価を受けている人がいます。これからご紹介する、東京師範会の伊藤静勘師もその1人です。
 昨年の12月3日から9日まで、東京上野の東京都美術館に於いて、「第57回勤労者美術展」が開催されました。これは財団法人東京都中小企業振興公社と東京都の主催になるもので、日本画・洋画を初め、彫塑・工芸・写真など7部門で数多くの作品が出品されました。
この美術展で伊藤師は、洋画・工芸・彫 塑の3部門にそれぞれ1点ずつ出品し、彫塑部門に出品した「岩手の人」が、初出品ながら、見事理事長賞に輝きました。
この作品は伊藤師のお嬢さんのご主人をモデルにした作品だそうですが、審査員から「素朴な感じがよく出ており、造形的な捉え方をしており、好感の持てる作品です」と言う講評を受けております。
また、工芸部門に出品した陶芸「春しだれ」は、惜しくも受賞は逃したものの、最後まで賞候補として他作品と競い合いました。
洋画部門に出品した「山装う」も含めて、作者の暖かい、誠実なお人柄がよく現れた作品だと思います。伊藤師は若い頃から絵が好きだったそうですが、結婚して仕事や子育てに追われ、しばらく絵筆を手にすることはありませんでした。七十代を迎えて、また好きなことを再開したそうで、今回の勤労者美術展は、単に自分が勤労者(自営)だからと言う軽い気持で出品したそうです。
「まさか賞を取るなど思っても見なかった。自分自身が一番驚いている。これを励みに、さらに努力したい」と言うご本人の弁もあり、これからの活躍が楽しみです。
 仕事と家庭を両立しながら、趣味として尺八を続けて師範となり、更に美術の世界でも高い評価を得る、このような多芸多才な人が竹友社の仲間にいると言うことは、私たち竹友にとって大きな喜びであり、励みでもあります。このニュースを聞いて、私も尺八以外に何か始めたくなりました。